きょうのちょうかん(タイプレ)

24時間営業しないコンビニエンスストアが広がっている。

5月時点で深夜を中心に営業時間を短縮している大手3社は1916店舗と、半年前から15倍に増えた。

深刻な人手不足に加えて、新型コロナウイルス渦による夜間の外出減で深夜営業が厳しくなったためだ。

コロナ後もこうした問題は続くとみられ、コンビニの「脱24時間」はさらに加速しそうだ。

 

日本経済新聞がセブンーイレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマートの大手3社から24時間営業をやめた店舗数を聞き取った。

4月末から5月1日時点でセブンが671店(うちコロナ理由が371店)、ローソンが649店(400店)、ファミマは596店。

約5万2千店ある大手3社のコンビニ全体の4%だ。

最大手のセブンが時短を本格化した19年11月時点では126店にとどまっていた。

 

急増したのはコロナ問題がきっかけだ。店舗の客足は依然として少ないほか、緊急事態宣言が各地で解除されても夜間に外出する頻度は低い。

入居施設の要請もあり、コロナによって時短に切り替えた店舗は計1367店に及ぶ。

 

「時短のデメリットを感じない」。九州地方のファミリーマートの加盟店オーナー(40)は5月1日、午後11時閉店に切り替えた。

人件費が高騰する夜間の従業員が不要になり、約10万円の経費が浮いた。

 

近畿地方のローソンの店舗オーナー(47)は時短営業で月商が8%減ったが「夜間に十分休めるようになった。もともと深夜の客は少なく非効率だった」と話す。

 

時短店舗はさらに増えそうだ。セブンが昨年7月に実施した加盟店向けのアンケートで深夜休業を「実施・検討している」と答えたのは全体の約15%にあたる2200店。

ファミマの調査でも、加盟店の半数の約7千店が時短営業を検討したいと回答している。

ファミマの沢田貴司社長は「営業時間は加盟店の判断。本部が決める時代はとっくに終わった」と話す。

 

ただ、時短営業はコンビニのビジネスモデルを大きく揺るがす。

コンビニ本部はフランチャイズ(FC)契約を結んだ加盟店から、粗利の一定割合を経営指導料として受け取る。

営業時間を短縮すればその分減収するため、指導料も減る。

 

クレディ・スイス証券の風早隆弘氏は「一般的に、指導料は各店舗の売上高の1割程度」と推定する。

深夜0時か午前5時までの売上高は1日の売上高の1割程度とされる。

仮に国内のコンビニ全店が深夜営業をやめたと仮定すると、単純計算で指導料収入は1千億程度減ることになる。

 

既にコンビニ各社経営支援として指導料の減額を始めている。

セブンは経営力の低い店舗向けに指導料を最大20万円減らすなどしており、年約100億円の減益を見込む。

時短営業がさらなる収益の下押し要因になりえる。

 

配送も課題だ。配送ルートは全店が深夜営業していることを前提に作られている。

深夜営業の店舗が減れば、トラックの増便など物流の見直しが不可欠になる。

 

コンビニの動きとは逆行する形で、ドラッグストアは24時間店舗を増やしている。

ウエルシアホールディングス(HD)は全体の11%にあたる225店(2月末)が24時間営業している。3年間で2.4倍に増やした。

松本忠久社長は「深夜は一定の需要がある。需要の受け皿になりたい」とさらなる拡大も視野に入れる。

コンビニの「脱24時間」が生み出す消費者の奪い合いも激しくなりそうだ。